ある日、ある時です

 先日、相続を放棄したのに、父の債権者という人がきて、借金も財産のうち、すぐに払えって言うんです。

 父の財産は、兄がすべて相続し、その代わりに兄が借金全額支払う約束で、兄が持ってきた書類にハンを押し、相続の放棄をしました。

 私は、ハンコ代として数万円しかもらっていませんし、放棄したので借金取りがくるなんて、絶対間違っています。

 ...とかいう話があったとします。わりあい聞くことが多いケースです。

 これは、”放棄”という言葉が一人歩きをして、単に遺産分割協議書にハン(署名押印)を押したことと、民法で定めている”相続の放棄”とを、ごちゃごちゃにしている場合です。

 相続の放棄というのは、相続の開始によって相続人に帰属すべき権利義務を、確定的に消滅させ、はじめから相続人とならなかったとみなす事をいいます。この場合、家庭裁判所の手続きが必要です。

 一方、遺産分割協議というのは、相続人が複数いる場合に、たとえば、「不動産と借金は長男、預貯金は二男が相続する」といった具合に、相続人全員が協議して、その帰属を決めることを言い、この協議の内容を書面にしたものを、遺産分割協議書と言います。(ものすごい大雑把な説明!)

 また、遺産分割協議で決めなかった財産については、法定相続分で相続することになります。

 私が、「放棄をしたと言われましたが、家庭裁判所に手続きをしましたか?、でなければ、どんな書類にハンを押しましたか?」とお尋ねすると、遺産分割協議書に署名押印をしたと言われることが、ほとんどです。(他の書類もあるのですが、ここでは省略)

 確かに、遺産分割協議ではマイナス財産(借金等)を、誰が相続するかをも決めることができます。

 しかし、遺産分割協議では、相続人の一人が債務を相続すると決めても、相続人全員が勝手に決めただけですから、<strong>債権者の同意</strong>がなければ債権者に対抗出来ませんし、他の相続人にも「支払え」と言えます。

 ...と言うわけで、債権者(借金取り)が同意していないために、借金取りがきたのだろうと思います。

【てるてる行政書士事務所】