「相続は、年金仕事?」

 これは、私の元上司(司法書士)の口癖の一つでした。

 これだけでは意味がわからないので、若干の解説をすると、私が努めていた頃の司法書士の仕事は登記が主でした。

 例えば、所有権移転(売買)の登記をすると、権利書(登記済証)出来て、それを顧客に渡すのですが、その権利書に”表紙”と言って、その事務所独自の用紙をくっつけます。

 この表紙には、その登記をした司法書士事務所の事務所名を印刷しておきますので、将来、その権利書の持ち主が死亡して相続登記が必要となった場合、とりあえず、その表紙に名前のある司法書士に相談に行くケースが多くなります。

 結果、司法書士が若かった頃にした売買などの権利書が多ければ、ある程度の年数が経過した将来、今度は相続登記を受託出来るケースも多くあります。

 若い頃に年金を掛けて、年齢がいったころに年金受けるがごとくに、若い頃の売買登記は、高齢になった時の、相続登記の仕事につながるっていう意味です。

 丁度、 「相続は、年金仕事」と言った、私の元上司の司法書士事務所は、私のいる弘明寺の隣町の上大岡にありましたから、上司の死亡を知らずに、私の所にご連絡を頂いたり、まったくの偶然に地域の近さからか、そんな権利書に再会することもあります。

 きっとご存命であれば、ご自身が受託されたであろうにと思うと、「小川君、相続は、年金仕事なんだよ!」と、言われた時の事を思い出します。

 「相続(の仕事)が出来るようになれば、やっと一人前だね」とも言われましたが、人の心の琴線に近い部分での仕事ですから、奥が深く、なかなか大変です。

[てるてる行政書士事務所]